物語を見ている
このテキスト中には、喋りながら思考にゆらぎをきざす瞬間がある。
言葉を無理に制御するのか、思い直して言い方を調整しようとするのかは、発声者に任せる。
稽古用テキスト
物語を見ている。
物語を見る。
誰の物語か。
誰かの。
誰かの物語がそこにある。
そこにある物語を見る。
今から始まるのは、一体なにが始まるのか。
今からなにが語られるのか。
語られること。
語られることは、本当だろうか。
受け入れるしかない。
それを受け入れるしかない。
本当というのがあるなら、それがそんなものか。
そこからは全力で逃げ去りたい。
どうしてそれを受け入れなければならないのか。
どうしてそれを受け入れる必要があるのか。
聞いて、どうして聞かなければいけないのはなぜ。
なぜ聞かなければならないのか。
そんなことを考えたくない。
考えたくもないことを、どうして考えたくもないことを、かみしめて、考えたくない。考えたくもないことを、ずっと考えたくもないと言いながら。
なんの話かわからない。なんの話でもない。
そう。実際にはなんの話でもない。
実際には向き合う必要なんてない。
これは、これは誰かのための、誰かの、誰かのための物語のはず。
誰かのための物語を、こうやってわざわざ見る。
こうやってわざわざ見なければならない。
語らなければならない。
語る必要なんてあるのか。
ある。
語る必要があると思ったからここにいる。
そう。
なにも知らないでいることはできない。
なにも知らないでいることはできなかった。
なにかを知ってしまう。
知ってしまったらどうなる。
どうにもならなかった。
どうにもならなかった。
それは好奇心。
好奇心は。好奇心があった。
あったからどうなった。
あったからこうなった。
好奇心があったからこうなっている。
好奇心があったから今に今に、今に至っている。
好奇心があったから、やめることができなかったから。
後悔はない。
後悔を後悔する。
後悔するようなことを……。なにかがある。なにかがあった。
なかったことにはできなかった。
どうした?
簡単。
簡単なはず。
忘れることはできるはず。
忘れてなかったことにできなかった。
どうして諦めなかった。
諦めなかっただけ。
なにが……。
なんでもない。